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「なんでこんなこと?」
「……羨ましかったの。悠生くんと仲良く話してて」
うつむいて、ポツリポツリと話しはじめる。
「悔しかったの。会ったばかりの子が……彼女の私よりも仲良さそうにしてて。もう見たくなかったの」
「ちょっとおどかせば逃げてくと思ったのに」
暗い顔でクスッと笑った。
ちぐはぐなその仕草は、今の美月の心をそのままに表しているかのように感じられた。
「さすが、悠生くんと対等に話せる人。これぐらいじゃびくともしないのね。本当は一度くらい、お出かけとかもしたかったな」
ゆっくりと悠生に歩み寄る。
そのまま手を握る。悠生はされるがままだった。
「でもそれはできないよね?私は悠生くんを幻滅させちゃったから」
そこまで悪いことはしてないと思うのだけど。私はそこまで気にしていないし、そもそも彼女との時間を割いてしまったのは私かもしれないのだから。
一人語る美月をみてそう思った。
口にはしなかった。
解放された悠生の手の中には、二枚の紙が握らされていた。
「今まで、私のわがままに付き合ってくれてありがとう。少しの間でも一緒にいられて、嬉しかったよ」
最後にまたごめんなさいと呟いて、走り去っていった。
目元に光る一筋の涙が羨ましい。
私は、場違いにそう思った。
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