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____あいつに初めて会ったのも、こんな憂鬱な雨の日だった。
その日は、急に雨が降ってきて折り畳み傘も持ってなかった。
課題ノートを忘れてきたのに気づいたのは、不運にも急いで帰っていた最中だった。
(こんな日に忘れ物なんてツイてない)
今日は金曜日だから、明日取りに行くなんてことも出来ない。
近道をするために普段は通らない裏道に入る。
もう水を吸ってひたひたになった枯れ葉を踏みしめながら、走る。
小さな並木林を抜けると、目の前に学校の裏門。
ようやく地面がコンクリートになると、スピードを緩めた。
風邪をひいてしまうかもしれないけど、もうずぶぬれ。
幸い明日は休日だし、一日二日寝込んでも大丈夫だろう。
元々の体力不足も相まって、変わり映えのしない景色でも見ながら、のんびりと歩くことに決めた。
服も教科書も、もう手遅れになっている。
ボーっと、何を見るかも意識しないまま周りを眺める。
だから、やかましい不規則な雨音の中に、違った水音を聞いたのは、単なる偶然だった。
「……何してんの?」
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