10人が本棚に入れています
本棚に追加
それから無事入学できた俺は、女子に囲まれるようになった。
中学でもそれなりにモテたが、小学生からの付き合いになると多少遠慮するらしい。
最初は舞い上がっていた俺でも、ここまで来ると鬱陶しい。
一目惚れ云々で告白してきて、断ってもついてくる。
キャアキャアと騒ぎながら友達と一緒に告白してきたり、本当に意味がわからない。
告白ラッシュで疲れ、そろそろ女性不信になり始めた頃、あのコと再会した。
「あの、消しゴムを借りたんですけど、覚えてますか?」
あの時の消しゴム。
返されてないこともすっかり忘れていた。
「あのときからずっと憧れていました」
悠生を見つめる、あのときと全く同じ視線。
それは、ささくれだっていた俺の心を癒してくれるような。
そんな純粋さを感じた。
「好きです」
最近は聞き慣れてきた言葉。
それでも、真摯に言われるとこんなにも刺さるものなのだと気がついた。
「それではっ!」
(えー!いい逃げ!?)
逃げようと背を向けて走り出した名も知らぬ女の子の腕を引っ張る。
「……君、名前は?」
「えっ?」
告白してくるのは、みんな着飾った派手な女の子が多かった。
ノリがすべて、美形が好き。
世の中そういう人がいてもいいとは思うけれど、俺はあまり好きになれなかった。
そんな中、あのコが現れた。
「俺と、付き合わない?」
ただ物珍しかっただけかもしれない。
だけど、このときに癒されたのも、本当だった。
最初のコメントを投稿しよう!