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「まー、本人の希望で秘密にしてたし、俺はあんなタイプとは付き合ったのはじめてだったから構ってやれなかったし」
「外出とかは?」
「一切」
「それは流石にひどい」
「前は俺が誘う暇もないぐらい連れ回されたから。あとさ、外出って楽しいか?」
「それなりに楽しいでしょ。あ、でも家の方がゆっくりできていいよね」
「だろ?」
うんうん、とうなずく。
そこで、悠生が持つ二枚の紙が目についた。
「ねぇ、それ何?」
「あぁ……渡されたやつ」
握りしめていた手を広げて、シワをのばす。
《○○水族館 無料招待券》
「水族館のチケット?」
「そうみたいだな」
「外出は楽しくないんでしょ?どうする?」
からかうようにいう。
「人にあげるのはどうかと思うし、俺と行かない?別にそのままあげてもいいけど」
「人にあげないって言わなかった?」
「俺が1枚使う分にはいいでしょ」
よくわからない理屈を並べる。
「一人で行くのもあれだし。晴れた日ならいい」
「じゃ、決まりな」
ニッコリと、と表現するには穏やかさが足りていない表情で笑った。
笑顔がレアだというのも、納得できる気がする。
……しょっちゅうだったら、周りの人の心臓がもたないだろうから。
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