雨の日の約束。

2/9
前へ
/47ページ
次へ
「ぐすっ……お兄ちゃん、お母さんが迷子になっちゃったの」  歩調を緩めたところでこれだ。  まだ5歳くらいの幼女は、俺のシャツの(すそ)をしっかり掴んで離さない。 「俺、急いでるんだけど」 「……?」 「お母さんはさがせないってこと」 「うわぁーん!」 「うわっ、やめ、さがす、一緒にさがしてやるから!」  女の武器(?)使うの早すぎだろ。  とっさに口を塞いだけど、周りは完全に不審者を見る目になっている。  これだから女と子供は苦手なんだ。 「花菜ちゃんのお母さんはいませんかぁー?」 「いませんかぁ♪」  手を繋いで公園の周りを歩く。  さっき泣いていたのはなんだったのか、幼女はすっかり高い声を弾ませて上機嫌だ。・ 「あのっ!」  向こうから息を切らして走って来る女の人がいる。 「あっ、お母さん!」  幼女が手を離して、女の人の方へ駆けていく。  相当探し回ったのだろう。明らかな安堵の色を浮かべていた。  感動の再会を終えると、こちらに目を向けた。  あ、しまった。お(いとま)するタイミングを逃した。 「私は花菜の母親です。花菜がお世話になりまして、本当にありがとうございました」 「いえ……」 「何かお礼を出来れば」     
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加