雨は嫌い。

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 水滴がしたたるフェンスの向こう。  日は雨雲に隠れ、辺りは暗くなっているのにも関わらず、プールに飛び込んでいく人影。  聞こえているのかもわからないまま、独り言のように呟いた。 「……誰?」  どうやら聞こえていたらしい。  プールから顔を出し、警戒するように辺りを見回していた。 「ここ」 「……なにやってんの?」  こっちのセリフだ。  私の姿を認めたらしく、あきれた声で言っている。  あいにく、雷のためこっちからは逆光で影しか見えない。 「こっちには屋根がある。雨宿りでもしてけは?」  外は雷鳴が轟いている。  学校の校舎はもうすぐだけど、天候は一メートル先も見えない闇と化している。  ここはお言葉に甘えた方がいいかもしれない。  プールの横には、水泳部の部室や授業の為の更衣室、シャワー室がある小さな建物がある。  私は、水泳部の部室に入れさせてもらっていた。  簡易的なライトしかない部屋は薄暗いが、それでも外に比べたら視界が効いた。 「で、何やってたの?あんなどしゃ降りの中で」  自分の前髪から水が滴るのも無視して、半裸の姿のままタオルを差し出してくる。 「あ、ありがと。……課題ノート忘れちゃったから取りに来たの」  さっきはよく見えなかったけど、背が高くてなかなか体もしまっている。  少しキツいけど端正な顔立ちはいかにも女子たちが騒ぎそうだ。 「明日取りに来たら?」 「そうすれば良かったかも……」  取りに戻ってきたはじめの頃はまだ良かったが、酷くなって家に帰れるかも心配になってきた。
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