雨は嫌い。

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 悠生が顔を赤らめるでも緩めるでもなく、平然としているのが一番ムカつく。 「貸して!」 「何怒ってんの?はい、どーぞ」  渡された体操服を受けとる。  悠生はロッカーをごそごそと漁っている。  そして。 「ちょっ、何やろうとしてる!?」  目を手で隠して叫ぶ。  悠生はただでさえ布面積の少ない水着に手をかけていた。 「着替えだけど?あんたも言ってたじゃん」 「予告して!」 「今から着替える。」 「……私も女子更衣室言ってくるわ」  部屋から出るために扉に手をかける。 「いいの?」 「何が?」 「この部屋以外はライトついてないんだけど」 「なんで!?」 「必要ないから。水泳部は男子しかいないし」 「そうだっけ……?」  薄暗くたって、やっぱりライトはあった方がいい。  何も見えない真っ暗な部屋で一人で着替えるか、少し見える部屋で悠生を警戒しながら二人で着替えるか。  ……着替えなくてもいいかなぁ。 「ここで着替えれば?」 「やだ」 「俺こっち向いて着替えるからさ、あっち向いて着替えろよ」  少しスペースが空いた場所を差す。  ほとんど物がないから、物陰に隠れることもできない。 「後ろ振り向かないよね?」 「見ても得しねぇし、振り向いたら俺が終わるわ」 「そっか。確かに」     
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