雨は嫌い。

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 言い方はアレだけど、自分本位の言い方は「俺を信じろ」なんて言うやつよりもよほど信用できる。  サッと着替えてしまおう。  ごそごそと布の擦れる音だけが聞こえる。沈黙が居心地悪い。 「……終わったか?」 「ん、大丈夫」  同時に振り向く。目に映るのは制服姿の悠生。  大雑把(おおざっぱ)に水気を拭き取られた髪は、ふわふわとはねている。  当たり前だが、半裸の水着とはかなり印象が違う。  不覚にも、少女漫画でよくみる学園の王子様を思い浮かべてしまった。 「やっぱり俺のだとでかいな」  貸してもらった体操服。  雨の日だとさすがに半袖は寒くて、長袖も着てしまった。  肩の位置もずれているし、指の先まで余裕で(おお)ってしまう。  裾もスカートのようになり、半ズボンは見えるか見えないかといったところだ。 「そうだね」 「……」  再び沈黙が訪れる。  外の雨音がよく聞こえる。雷の音はしなくなっていた。  さっきよりも雨足は弱くなっている。  上がるのは時間の問題か。 「お前さ、クラスどこ?」 「Cだけど。そっちは?」 「A。俺のこと知らないなんて珍しい奴だな」 「そーゆーのを自意識過剰って言うの」 「この学校で会った女子はみんな俺のこと知ってたんだけど」  そういえば、友達が「イケメンがいるー!」みたいなことで騒いでたっけ。     
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