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雨模様の彼女。
「ねぇ、悠生いる?」
只今私は、借りた体操服を返すべく、A組に乗り込んでいた。
正確には、乗り込むべく、出入り口にいた女子に悠生の行き先を聞いていた。
「悠生!?」
「え、私、おかしなこと言った?」
「いや、悠生くんならいるよ」
その女子は驚きながらも悠生を呼んでくれた。
休み時間で人が騒いでいる中、悠生の周りだけは一定間隔が空いている。
実際には、一定間隔を空けつつ、しっかりと女子どもが群がっていた。
いや、何とも不思議な光景である。
私は周りの女子は気にしないことにした。
……そうじゃないとやってられない。
「どうした?」
「私、悠生に体操服借りたでしょう?」
「わざわざ返しに来てくれたのか?」
「当たり前じゃん」
「明日あたりに奇襲掛けに行こうとしてたんだけど」
「なによ、奇襲って」
「体操服返せってお前のクラスに」
「今日来て良かった」
「お前、騒ぎ苦手そうだからな」
「……今でも軽く騒ぎになってるっぽいけど」
「……だな」
気にしないことにしても、やっぱりこれだけ視線を集めれば気になってしまう。
主に私に集まる視線は、あまり好意的ではない。
女子達が、こそこそと話している。
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