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どのくらい時間が経ったんだろう。俺が顔を見せると、お姉さんは撫でてくれていたその手を止めて、俺の顔を覗き込んでくる。
「大丈夫?」
「……それ、さっきと全く一緒」
俺が呟くと、お姉さんは笑った。
「そうね」
俺は横になったまま、お姉さんの頭に手を伸ばす。その髪を撫でると、お姉さんは不思議そうな顔をして俺を見下ろした。……やけにお節介なこの人に、何か返してあげたくなった。
「お姉さんが泣きたい時は、俺がそばにいてあげる」
すると、お姉さんは目を瞬かせる。じっと俺の目を見つめるから、俺もじっと見つめ返す。そしてお姉さんは小さく笑った。
「ありがとう」
――あぁ。やっぱり笑った顔の方がいいなと思う。仏教面より、笑顔の方がいい。それなのに、なんで普段は仏教面なんだろう?なんで普段は眼鏡なんだろう?なんでここで働いてるんだろう?なんで俺に声かけてくれたんだろう?いろんな疑問が一気に沸いた。
何を聞こうか迷ったけど、でも一番はそれらじゃない。
「……お姉さん。名前教えて?」
雨は止んだろうか?でも、どっちでもいい。降っていたなら、お姉さんに相合傘してもらおう。
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