雨の日の泣き方

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頭のてっぺんがじわりと濡れた。空を見上げると、鈍色の雲から雨が降り出した。あっという間に本降りになり、外を歩く人たちは傘を差したり、雨宿りしたり、慌てて走り出したりしている。 俺はぼーっとその雨を眺めていた。雨宿りする気にも、走り出す気にもなれない。夜通し飲んでいて、身体がだるい。雨が俺の顔を、肩を、全身を濡らす。すると、鈍色だった空が急に白くなった。俺は視線を下ろす。 小柄な女の人が、俺に傘を差し向けていた。 「大丈夫?」 「……大丈夫じゃない」 俺の言葉にその人は一瞬目を丸くして、小さく笑った。 「そうだね。ごめん」 「お姉さんが謝ることないよ」 俺は首を振り、目の前のお姉さんを見つめる。――歳は20代前半くらいかな。ニットにジーンズと割とカジュアルな出で立ち。お姉さんはハンカチで俺の顔を拭く。だけど俺はそれを避けた。 「いいよ。もうずぶ濡れだし」 「でも、風邪引くでしょ?」 「全身濡れてるから、いい」 なお断ると、お姉さんはじっと俺の顔を見つめる。視線だけで『どうしたの?』と問えば、お姉さんが口を開く。 「泣いてた?」
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