雨の日の泣き方

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お姉さんは事務的に言った。 「服、出しておいて。乾燥機かけておくから」 その台詞に思わず目を瞬かせる。 「乾燥機の場所まで知ってるの?」 するとお姉さんは、またじっと俺を見つめてきた。不思議そうな顔をすれば、お姉さんが呟く。 「やっぱり気づいてなかったのね?」 「え?」 お姉さんは鞄の中から、眼鏡を取り出してかけた。 「あ」 そこで俺はようやく気づく。お姉さんはいたずらが成功したかのように微笑んだ。 「いつもご利用ありがとうございます」 ここは、俺が何度も利用しているラブホテル。そして、眼鏡姿になってようやく分かった。お姉さんは、ここのフロントのお姉さんだ。しかも昨日も会っている。でも俺は、お姉さんがここのスタッフだったことより、いつも仏教面のフロントの人が笑顔を見せたことに少なからず驚いていた。しかしお姉さんは、そんな俺の感想を余所に笑顔をおさめる。 「好意で貸してもらったんだから、早くお風呂入って」 ……聞きたいことは山ほどあったけど、俺は大人しく風呂を先にいただくことにした。 ***** 風呂から上がって、服は乾かしてもらってるからバスローブを着る。部屋へ行くと、お姉さんはソファーに座って本を読んでいた。 「風呂出た」 「うん。もうすぐ乾燥機終わると思うから」 「ん」 俺はお姉さんの隣に腰掛ける。
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