第五章 暗躍

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◇  たよりなげに指先だけ合わせながら、二人は薊花の家に向かった。  薊花は、ややうつむいている。  何か言いたげな様子である。  家に着くと、薊花の母は、嬉しそうに迎え、二人を奥に通すと、茶だけ運んで姿を消した。 「襲ってきた相手に心当たりがあったのか?」  向かい合って座り、秦盟は、単刀直入に聞いた。 「覚えておいでですか? 蓮華寺のこと」  秦盟は、上気を抑えられなかった。  話すべきはそこではないのはわかっているのだが、言葉がすべった。 「あれは、どういう……」  薊花は頬を染めた。 「手練れがいたのです。命の危険を感じるほどの相手でした」 「その手練れの男だったのか?」  コク、と薊花が肯く。 「しかし、なぜまた?  何か見たとか、知ってしまったとか……」 「あの場にいたのが私だったとわかれば、危ないかもしれないでしょうけれど。  何と言えば良いのか、今回は、それを知らずに襲ってきて、あの時の相手だとわかったようです。どう言ったらいいのでしょうか。  偶然にも、同じ糸の先につながっていた?」 「襲ったのは、君をか? それとも、俺か?」 「最初の一撃は、明らかにあなたを狙っていました」  秦盟は、薊花に突き飛ばされたのを思い出す。 「また、救われたな」  薊花がかすかな笑みを浮かべる。 「今度は、俺が動く番だろう。  戦いは、事前が勝負。できる限りのことをしておく」  薊花が、頼もしげに秦盟を見た。  白い顔が、まぶしかった。大切にしたい、守りたいという気持ちが湧き上がる。
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