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◇
たよりなげに指先だけ合わせながら、二人は薊花の家に向かった。
薊花は、ややうつむいている。
何か言いたげな様子である。
家に着くと、薊花の母は、嬉しそうに迎え、二人を奥に通すと、茶だけ運んで姿を消した。
「襲ってきた相手に心当たりがあったのか?」
向かい合って座り、秦盟は、単刀直入に聞いた。
「覚えておいでですか? 蓮華寺のこと」
秦盟は、上気を抑えられなかった。
話すべきはそこではないのはわかっているのだが、言葉がすべった。
「あれは、どういう……」
薊花は頬を染めた。
「手練れがいたのです。命の危険を感じるほどの相手でした」
「その手練れの男だったのか?」
コク、と薊花が肯く。
「しかし、なぜまた?
何か見たとか、知ってしまったとか……」
「あの場にいたのが私だったとわかれば、危ないかもしれないでしょうけれど。
何と言えば良いのか、今回は、それを知らずに襲ってきて、あの時の相手だとわかったようです。どう言ったらいいのでしょうか。
偶然にも、同じ糸の先につながっていた?」
「襲ったのは、君をか? それとも、俺か?」
「最初の一撃は、明らかにあなたを狙っていました」
秦盟は、薊花に突き飛ばされたのを思い出す。
「また、救われたな」
薊花がかすかな笑みを浮かべる。
「今度は、俺が動く番だろう。
戦いは、事前が勝負。できる限りのことをしておく」
薊花が、頼もしげに秦盟を見た。
白い顔が、まぶしかった。大切にしたい、守りたいという気持ちが湧き上がる。
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