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僕の住んでいるのは小さな街だけど海がとても綺麗。
静かに波音を聞いているとまるで母親の胎内にいるような、そんな落ち着きすら感じる。
いつもと変わらない浜辺を1人で歩いていた。夕暮れにはまだ少し早いこの時間が好きだ。
歩いていくと岩場に座っている女性を見つけた。20歳になったかまだなっていないかぐらいで、茶色の短い髪と真っ白で長い手足がとても美しい。
ただ街で見た記憶がない。こんな小さな街なのに。興味があり声をかけた。
「こんにちは、ここには旅行かなにかですか?」
話し掛けられたらことに驚いたのかビクッとしたが静かな目でこちらを見て、ゆっくりと答えてくれた。
「いいえ。待っているんです」
「ひょっとして恋人と待ち合わせですか、あなたは美しいから」
美しいから、なんて普段は言わないけど彼女を見るときっと誰もが言わずにはいられないだろう。
「待っているのは夜、あとは小鳥です」
夜と小鳥を待つ美しい女性・・・小さいときこの街で一番物知りのおばあさんが
「ある伝説」を教えてくれたことを思い出した。
でもあれは子供を楽しませるための物語だろうと自分に言い聞かせる。
いくらなんでもそんなことはない。
「その顔、私のこと知っているんですね?」
「あ、いや・・おかしな昔話を、教えられて・・」
「ふふ、私は人間ではありません」
―人魚なんです
おばあさんが教えてくれた伝説はこの海に住んでいる人魚についてだった。
太陽が昇っているときは海から上がることができ、茶色い髪色で、人と同じ二本の足で歩ける。
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