■ある羽を持つ種族の話

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しばらく、長らく、またはそれから。いずれかの時がたった。彼は成長した。兄弟たちは羽を授かり、彼もまたそれを手に入れた。彼は初めて手に入れた、浮遊感と言うものに感動しながら、しばらくの間、空を支配する太陽には近づくことはなかった。彼は、あれほど渇望してなお、太陽に挑戦するのが恐ろしかったのである。  だが、彼が空を見上げると、太陽はいつもそこにいた。はるか頭上から、優しくも悩ましい笑みを投げかけるのだった。  恐怖と畏怖。それから敬愛の念。大いなるそれを征服してやりたいという欲望。彼はしばらくその思いをもてあましていた。なぜなら、彼はもう子供ではなかったからだ。自身の食物は自分で探さねばならなかったし、風の吹かぬこの国では、空を飛ぶのも一苦労であった。そうして周りの友人や兄弟たちが恋人や子供を持っていく中、彼はずっと一人であった。
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