■ある羽を持つ種族の話

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彼は、自分自身が愛しているのは、かの太陽だけであることを再認識した。ある日とうとう彼は堪えきれなくなり、彼は勢いをつけると、そのまま上空へ、太陽目掛けてすっ飛んでいった。  いとおしい光。この世界に溢れている光の中でも一番の、狂おしい程にいとおしい光。その光の中に、全身をうずめたい。頬に手を当てて欲しい。優しく撫でて欲しい。光という物体のないものに、彼は恋していた。彼は光を愛していた。きっと彼女も自分を愛していることだろう。そうして、その思いは彼女に近づくにつれ、どんどん強いものとなっていった。  かの太陽を手に入れるのなら、自分がどうなっても構わない。人生を賭けてなお、彼女を愛したい。この身がどうなろうとも構わない。ただただ、彼女に包まれていたい。彼女に微笑んで欲しい。彼女を征服したい。顔が焼けている気がする。だが、狂おしいほどの熱情の中で、彼はもはや痛みを感じていなかった。光が、光が彼の頭を支配した。全身をも支配した。今、自分は彼女の中に居るのだ。手先が燃えている気がする。何かに触れた気もする。もはや引き返すなどと言う選択肢はない。自分は今、彼女の中に居るのだ――……。
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