一番てっぺんに!

4/21
985人が本棚に入れています
本棚に追加
/963ページ
 ムツヤの住む家のすぐ後ろは、世界中の冒険者が求める幻の裏ダンジョンだ。その事はここに住むムツヤですら知らない。  裏ダンジョンの家の前に住む人間の朝は早い、ムツヤの祖父であるタカクは今年で73歳になる。  動きやすさを重視し、ゆったりとしたローブを着て、曲がった腰に手を当てながら玄関のドアを開け一歩一歩ゆっくりと外へ出ていく。  するとそこに全長2メートルはあるコウモリのような化物が上空から3匹タカクへ襲いかかってきた。  タカクは不気味なコウモリを見上げると面倒臭そうに右手を天に上げる。  その瞬間老人のシワシワの手から轟音と閃光が鳴り響き、地上から天へと雷が打ち上げられた。  コウモリ達は即死したらしく地上に落ちると煙と共に消えた。 「じいちゃーん、今日こそ最上階行ってくるからよー!」  そんな光景を見たら一般人どころか、冒険者でさえ何事か、どこかの高名な大魔法使いかと注目するだろう。  しかし、孫のムツヤは一切動じずあっけらかんと玄関から顔を出し、こげ茶色の目で祖父を見ていた。  コバエを叩き潰したぐらいで自慢をする人間も、倒した相手を英雄のように称える人間も少ないだろう。彼らにとって今の行為はそれぐらいの感覚に近い。 「わかったわかった、気を付けて行って来い」
/963ページ

最初のコメントを投稿しよう!