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「私はね、この扉を…… まぁ言ってしまえばこの塔自体を何千年と守っているの。この先に行きたかったら私と戦って勝たなくちゃいけないわ」
人間ではないといえ、祖父以外で初めて言葉を交わして、胸が変にドキドキする相手と戦いたくない。
剣を構えたままどうすれば良いか答えも出てこないのでムツヤはじっと立っていた。
「でもね、私はあなたと戦いたくないのよ、ムツヤ。あと邪神様じゃなくてサズァンって呼んで」
初めて他人に、まぁ、正確には人ではないのだが。
ともかく知らない相手に名前を呼ばれてムツヤは胸が高鳴る。
腰をくねっくねさせながら一歩一歩サズァンはムツヤの元へと歩いてきた。
これが本で読んだ色っぽいという奴なのだろうか、そんな風に冷静に考える自分と、一方で胸の高鳴りで死にそうになる自分がいる。
「私はね、あなたが子供の頃からあなたを見守っていたわ。最初はもうビックリしたわよ?」
そう言ってサズァンはクスクスと笑った。
「だって、子供がこの塔の中に入ってきちゃうんだもん。しかもそれが危なっかしいけど中々に強くて」
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