一番てっぺんに!

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 こちらは相手のことを今日初めて知ったというのに、相手からは自分を子供の頃から知っていたと告げられる感覚は実に妙なものだ。 「ねぇ、覚えてるかしら? あなたが油断してコカトリスに噛まれちゃって、死にそうになってた時に助けてあげたの私なのよ?」 「コカトリス?」  頭をひねってみるがムツヤにはコカトリスが何者かわからない。 「あぁ、アレよ。鶏に蛇のしっぽが生えたやつ」  あー、とムツヤは声を出して合点が言ったようだ。  あの『しっぽに毒を持ってて、目を合わせ続けると段々と体が動かなくなる鶏の化物』だ。  ムツヤは外の世界の本に載っているモンスターならば正しい名前を知っているが、それ以外は自分の付けた安直な名前で呼んでいるので無理もない。 「確かに一回噛まれた時がありますたね」  今度は敬語を意識しすぎてしまい、語尾を噛んでしまった。 「あの時、目の前に解毒薬置いてあげたの私よ。本当はそういうのダメなんだけど」  完全に思い出した。ムツヤは鶏の化物に噛まれて冷や汗が止まらなくなり、体が死ぬほど重くなった時があった。  当時はまだ、何でも入る小さなカバンを持っていなかったので、手持ちに飲むと元気になる青い薬が無い時だ。  そんな時、目の前にガラスが転がる音がし、どこからともなく青い薬が現れたのだ。 「そうだったのですか、それはもうあの時はご親切にごありがとうごぜぇました」  剣を収め、勉強して覚えたての敬語をムツヤは使うが、あいかわらず所々で訛りが顔を出してきてしまう。  その度サズァンは堪えきれなくなってクスクスと笑っていた。  田舎者をバカする気持ちからではなく、小さい頃から知っている子供が一生懸命に背伸びをしようとしている事が可愛らしくて、面白くもあったからだ。 「それで、この先に行くためには私を倒さなくちゃいけないんだけど、どうするの?」  そこまで言ってサズァンは困った顔をした。 「私としてはあなたの事は近所の可愛い子供とか弟みたいなものだから出来れば殺したくないんだけど……」  そう言われてしまうとムツヤも困る。  武器を手に取って襲いかかって来るのであれば戦う覚悟も決められるのだが、そう言われてしまったら戦いづらい。  元より出会った時から戦う意志は消えてしまっていたのだが。
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