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(イラスト:東原望美先生)
急いで階段を駆け下りた。
途中またモンスターと出くわしたが剣を取り出すのも面倒だったので全てぶん殴って片付ける。
「じいちゃん、てっぺんまで登ってぎだからあの結界って奴を壊しでぐれ!」
ムツヤは家に帰るなり祖父のタカクへと言った。
タカクはお茶を飲みながら目線だけをムツヤに移して、とうとうこの時が来てしまったかと湯呑を置く。
「そうか、それならば仕方がねー、明日の朝に結界を解いでやっがら」
「いんやダメだじいちゃん、俺は外の世界で成長しでハーレム作んだ! もう今すぐに行く!! 今すぐじゃなぎゃダメだ!」
ムツヤは鼻息を荒げてそう言うと、やれやれとタカクは重い腰を上げた。
家から結界の間際まで歩く二人の間に言葉は無い。
途中また巨大なコウモリが何度も襲撃してきたが、ムツヤが飛び上がって平手打ちで全て叩き落とした。
「ムツヤ、いづがはこの日が来るど俺も思ちょった」
タカクは家から出て初めて話し出した。その表情は当然だがどこか寂しげだ。
「外の世界を見てこい、ムツヤ」
「じいちゃん……」
タカクがそう言って結界に手を伸ばすと青白い光に切れ目が現れ、左右に開いた。
あれほど行きたかった外の世界なのにムツヤは少し足取り重くその裂け目へと歩く。
「じいちゃん、カバンの予備に薬死ぬほど入れでおいだがら死にそんなっだら飲めよ! あどー広げたら竜巻が起こる巻物も入れとったから魔法使うのしんどい時は使えよ、それから」
「俺の心配はすんでねーよ、ムツヤ」
シワだらけの顔を更にクシャクシャにし、ニッと歯を見せてタカクは笑った。
ムツヤは黙って頷いて一気に結界の裂け目に走り出す。
中は一面が真っ白で、急に高い所から落ちたような浮遊感がし、たまらず叫び声を上げる。そのまま気を失い、気付いたら。
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