第1章

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   通りすがりにキャラメルフラペチーノ  平日の朝の駅前は、何かと騒がしい。だけど、大勢いる人たちが、どんな仕事をしているのか?どこまで通勤しているのか?までは、知る由もない。  僕は、時間ギリギリよりも幾分余裕をもって通勤したい派なのでかなり早く最寄り駅に到着する。駅の改札前で人間ウォッチングをするのが趣味みたいなものだからだ。 「皆さん、ご苦労様です」  僕は、いつも心の中でそう呟きながら、慌ただしく改札を抜けていく人波を見ていた。僕自身は、大した仕事をしているわけじゃあない。倉庫街の物流センターでのピッキングや梱包作業程度の仕事だ。因みに時給は、900円。朝から夕方まで頑張ったって1日7000円くらいにしかならない。仕事自体が退屈なので、せめてもの楽しみとして朝の駅で人間ウォッチングをする。まあ、これ自体もそんなにワクワクする程の趣味ではない。 「さて、そろそろ自分も出勤しよう!」  僕は、気怠い身体を引きずるようにして改札をようやく抜けた。  勤務先の最寄り駅に着いた。さあ、いよいよ仕事開始だ!その前に、まだ時間の余裕がある。今度は、駅の構内にあるカフェでコーヒーブレイクの時間だ。僕は、いつだって抹茶フラペチーノを頼むことに決めている。理由は、特にないけどコーヒーブレイクという割には、コーヒーは、嫌いだから飲まない。 「抹茶フラペチーノのお客様!お待たせいたしました!」 大して可愛くないけど、愛想の良いいつもの女性店員からトールサイズの抹茶フラペチーノを受け取った僕は、狭い喫煙室に入った。僕は、タバコがやめられない質なんだ。 まだ、出勤時間まで余裕がある。抹茶フラペチーノとタバコの相性は、正直良くない。お互いの良さを殺し合っているような感覚だ。 「今日は、朝から忙しいらしいから早めに行くか……」  いよいよ、出勤だ。  トレイを片してから、店を出ようとしたその時、まるで美少女漫画から飛び出してきたような可愛い女性とすれ違った。彼女の髪の毛からとてもいい匂いが漂ってきた。 「目の保養には、なったかな?」  僕は、一人ほくそ笑みながら一瞬だけ振り返ってみた。彼女は、当然何かを注文していた。 「素敵な女性だなぁ……」
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