ワンコロ

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 尻餅つく程度で済んでるたぁ、中々体幹の仕上がったヤツだ。  橋本なんざ一発ちょっとどついただけで吹っ飛ぶ。  「すみませんね、手荒なもんで」  笑う。  鼻っ柱を抑えた掌から、血が垂れている。  それでもキョトンと目を丸くして、俺を見上げている。  「お友だちの荒川くんがお金借りたままどっか行っちゃいましてね、」  「あ、俺、連帯保証人でした」  鼻血で汚れた右手を左手で打つ。なもんだから、鼻血は両手について、さらにだらだら口にまで垂れてる。  なぜそこで『判った!俺賢い!』みたいな顔をするのか。  誉めてほしそうな目でこちらをみるのか?こいつはバカなのか?何か考えがあるのか?  「察しがよくてありがたいことです。荒川くんがいなくなってしまった以上中條さんが」  「でも、俺、金なくなっちゃって」  なくなっちゃって?パチでスッたか、競馬か。通りでこの部屋には物がない。テレビもベッドも、なぜか電球すらない。  「なかろうとなんだろうと払うもんは払うんだよ」  「痛い」  打った掌がベチンと鳴った。  反射的に鳴いた犬みたいでまた胸がキュンとする。
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