カラダで払ってもらえませんか。

ワンコロ

　今時こんなアパートがあるのか。

　感心したくなる。

　多分、２階の奥の部屋には母子がすんでいて母親はパートと内職を兼業している。子どもは週２で同じ服を着ていて靴底の擦りきれた運動靴を大事そうに履いてる。年に一度誕生日だけはコンビニのケーキをが買ってもらえる。それを楽しみにしているが、本当はホールケーキがほしいことは母親に言えず、そっと胸の奥にしまっている日々。

　全く、昔の俺じゃねぇか。

　ちょっと、目頭が熱くなった。

　大丈夫だ。ホールケーキくらい俺が買ってやる。

　腹がくちくなった嶋瀬と橋本は溌剌とした面構えになっていた。空腹のせいでびびってたのかと勘違いしそうだ。

　「英さん！こっちっす！２階っす！」

　「すっす、すっすうるせぇ」

　手前ぇの住む国の言葉くらいちゃんと遣え。
　嶋瀬のすっす、すっすに促される。

　２階。の、一番奥。

　残念。こちらのお住まいは俺と同じ境遇の母子ではなく、お金払えないとアンコにされちゃう学生さんのお住まいでした。

　「中條瑛斗」

　大層立派なお名前だ。
　ナカジョーとか、エイトとかいかにもリッチな現代っ子感が否めないが。