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第1話
「またか……」
ただ暗い空間に私はいた。
目の前には、私と同じ顔をした少女がいる。いや、正確には似ているだけか。血色は悪く青ざめた顔、その目には光はなく、深い闇が見える。茶色がかった前髪に留めているヘアピンが印象的だった。
「いつもいつも何を言ってるの?」
少女は何かを伝えるためなのか、口を開くが、その声が私の耳に届くことはない。
――ピピピピピピ!
「ふがっ!?」
あ、頭の中で鐘が鳴ってる!
早く目覚ましを切らないと死んじゃう、死んじゃう!
「頭痛い。……ギモヂワルイ」
枕元の目覚ましを無理やり黙らせて、時間を確認する。
時刻は午前8時を指していた。昨日は飲みすぎていつ家に着いたのかすら覚えていない。もしかしたら、12時をすぎていたかもしれない。
窓からの朝日が眩しい。
普段ならば仕事に行かなければならない時間なのだが、幸い今日は休みである。オーナーが海外旅行に行くと言うので、急遽三連休となったのである。そのせいで調子に乗って飲みすぎてしまったわけだが。
仕事といっても大したものではない。ただのショップのしがないバイトである。大学を卒業してはいるが、定職についたことは一度もない。
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