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別にパンが食べたかった訳ではない。亭主の手を煩わせたくなかったからだ。娘の麺を茹でて亭主の蕎麦なりうどんなりを用意してさらに私の物となると煩わしいだろうと思ったから菓子パンにしたのだ。
気を遣いすぎと思われるかもしれない。でも経験上、夫のキャパシティと警戒水域をわかってるので本能的な防御態勢というわけだ。
「まだ腎盂腎炎ではないみたい。膀胱炎だって。また熱が上がったり腰痛が酷くなったら点滴するから来なさいって。」
「良かったじゃないか。」
帰宅後、娘と自分の昼食の用意と後片付けはしてもらった。私もパンを食べてベッドに横になった。
「ジャーの中のご飯で明日の朝まで足りるかな?見て。」
しばらくして夫が聞いてきた。
「それは自分が今晩どれくらい食べるかによるんじゃない?」
中身を見ながらそう答えた。
「いや、俺は食べないと思う。」
「え?」
「まだわかんないけどね。出かけるかもしれないし」
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