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「惚れてしまいそう」 「えっ、あっいや――その、なんだ」  それほど飲んではいないのに、女たちの甘さを食らって耳まで赤くする宗平を、喉の奥で笑いながら肴にして酒を飲む長親に、孝明が咎めるような目を向ける。 「なんだ」 「汀が居ます」 「方便だろう」 「…………」 「気に入っているようだな」  しみじみとした長親の声音に、寂しげなものが浮かぶ。 「試しておられるのですか」 「何をだ」  強い目で、孝明が睨むでもなく見つめてくるのに息を吐き、長親は杯を空にした。その目は女にからかわれ、純朴そうにうろたえる宗平を見つめている。 「あれは、普通の人だろう」  孝明は答えない。 「――まあいい。久しぶりの再会と、新たな出会いを楽しませてくれ」  長親の言葉に、孝明は諦めたようなため息で応えた。  酒の匂いの充満する部屋で、宗平が大の字になって眠っている。隣の部屋には、宴の途中で眠気に負けた汀が穏やかな寝息を立てていた。女たちはとうの昔に辞しており、部屋の中では長親と孝明が残った酒を処理するように、黙々と飲み続けている。 「――汀は、いずれ私の元に来させるつもりか」  沈黙を、長親が破った。 「まだ、どうなるかはわかりませんので」     
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