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床に目を落としたまま、孝明が答える。白い肌が月光に照らされ、青白く輝いていた。それをしばらく眺めても、感情らしいものは浮かんでこない。孝明を見ていた目を、眠る宗平の上に移動させた長親は親しみを視線に込めた。
「よい、男だな――」
それに、孝明は答えない。
「このような男が友であったのならば、さぞ面白かろう」
わずかに孝明が身じろいだ気配があった。けれど、彼はそれ以上動かずに黙している。
「宗平を私の供に加えたい――と、言ったらどうする」
ゆっくりと、孝明が手を着き頭を垂れた。
「――――…………」
何かを言いかけ、口をつぐむ。それを、面白そうに長親が眺めながら酒を飲む。
「よほどに、気に入っているらしいな」
「…………」
「よいことだと、言っているんだ」
長親が杯を宗平に向けて、彼を祝すように持ち上げた。
「本当に、よい男だ――――このまま、何を見ても変わらず、オマエの友であり続けるのであれば、な」
月光が、やんわりと言葉を包んで宗平の上に広げた。
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