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 気分を害するふうでも無く――むしろ楽しそうな長親が孝明を見た。恐縮するでも無く儀礼的に頭を下げる孝明に、良い拾い物をしたなと笑った長親が背を向ける。 「同道しようかと思ったが、やめておこう。互いの目的の地で再会の出来ることを楽しみにしておく」  言いながら去っていく背中に疑問を浮かべた宗平が、問う目を孝明に向ければ 「目的の場所は、同じだと言う事だ」  これ以上は質問をするなと言いたげに、顔ごと目を逸らされた。  宿場町を抜けて街道を進む孝明ら一行の他にも、商いの種を求めて中央に向かう者たちが道を進んでいる。 「みんな、領主様の屋敷に行くのか」 「みんなじゃ無ぇだろうよ。ほとんどが、大名一行を迎えるために集まった奴らを目当てに、商売をするつもりだろうなぁ」  汀が目を丸くするのに、呑気な調子で宗平が答えれば隣を進んでいた行商人らしき男が声をかけてきた。 「おや、兄さんたちも中央へ向かうのかい」 「ああ。アンタも、中央へ出て商いか」  ちらりと男の背にある行李を見た宗平に、男はへへっと笑う。 「大名様のお越しってんで、あちこちから品や人が集まるからな。大名様らの警護をするために集まった相手に、ちょっと一儲けさせてもらうつもりさ。兄さんらは、芸を見せに行くんだろう」     
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