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 近づいてくる足音に向けて警戒するでも無く体を開き、待ち受ける宗平の前に五人の男が林の中から姿を現した。一見して賊とわかる風体をしている男たちに、宗平は親しげな声をかける。 「野営の仲間に加わるんなら、歓迎するぜ」  男たち――賊は、顔を見合わせ宗平の全身を眺め、怯える又七と身を固くする汀、彼らを気にするふうも無くたき火の様子を気にする孝明を見て、自分たちの相手が出来るのは宗平だけだと判じた。下卑た笑いを顔にはりつけ、頭目らしい男が返答した。 「たき火よりも、アンタらの持っているモンで懐を温めさせてもらいてぇんだよ」 「そっちの兄ちゃんとガキは良い値が付きそうだし、良い出会いにさせてもらえそうだぜ」  男たちがそれぞれに得物を構えて扇状に広がっていく。左右に目だけを動かして男たちの動きを確認しながら、宗平は気負うでもなく鯉口を切った。  じり、じり……と男たちが距離を詰めてくる。宗平は視線を向けながら緊張をする様子も無く、仕掛けてくるのを待った。 「へへ……っらぁああ!」  うすら笑いを浮かべた左右の男が宗平を挟む形に移動したかと思うと、同時に地を蹴り飛び掛ってきた。ふっと軽く息を吐き出した宗平は、左の男の顎を鞘の尻突き、右の男の鼻を柄の先打ちながら、刀を抜いた。 「げあっ」 「ぶぐっ」     
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