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 飛びかかった勢いのまま打たれた男たちが、仰け反る。先鋒として動いた二人が難なく倒されても、正面から向かってくる三人は動揺をする事も無く宗平に挑みかかる。腰を落とした宗平は軽く前に飛び出すと、左の男の脇腹を打ち付けながら前進を止め、右の男の首を峰で打ち据えた。 「がっ」 「ごぉ」  短い声を上げて倒れる男の間から、伸びあがるようにして見えた頭目らしき男が鉄製の大槌を振りかぶり、雄たけびをあげる。 「あらぁああっ!」  足を大きく広げ、低い位置にある宗平の脳天を確実に打ち砕けると思ったのだろう。男は欠けた歯と血色の好い歯茎まで見せながら口を笑みにゆがめた。 「がっ、ぁおおぐぉ」  その口に、腰をひねった宗平が柄を突っ込む。上あごを突かれた男は、そのまま逆戻りをするように吹き飛んだ。  どしゃり、と男が地に落ちる。一拍の後に、汀が飛び跳ねるように立ち上がった。 「すごいっ!」 「は、ぁあ……たまげたなぁ」  半分放心しながらの又七に、へへっと照れくさそうに得意げな笑みを浮かべた宗平が、孝明に少し胸を逸らして見せる。 「雇った甲斐は、あっただろう?」  それを受け流した孝明は、にこりと又七に笑って見せた。 「あの動きが舞となれば、美しいとは思わないか?」  又七は、放心したような感心したような顔で口も目も大きく開いたまま、何度も大きく頷いた。そこで、宗平は自分が用心棒として雇われたのではなく、舞手ということになっていたことを思い出した。     
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