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 ちらりと咎めるような流し目をくれた孝明に、すまんと小さく腰のあたりで謝罪の手を示した宗平の左右で男たちが呻き、起き上がる。顔を手で押さえながら起き上がる男たちに、又七が息をのみ汀が身を固くした。 「まだやるか? それとも、おとなしくお家へ帰るか――どっちだ」  腰に手を当てて男たちに顔を向けた宗平が、倒れたままの男たちを顎で示す。 「死んじゃいねぇから、連れて帰って介抱してやんな」  起き上がった男二人は顔を見合わせ、じりじりと警戒しながら後退し、倒れている男たちを引きずるように、ゆっくりと林の中へ帰っていく。その姿が見えなくなってから宗平はたき火の輪の中に戻った。 「宗平は、すごいな」  素直な、汀の感想に「そうだろう」と宗平が歯を見せて笑い、又七も多少興奮気味に宗平の先ほどの動きを思い出し、説明をするように言葉にしながら褒めちぎる。それに、まんざらでもない顔をしながら宗平が応え、汀は更に興奮しだす。そろそろ眠ろうと孝明がさりげなく言葉を差し挟んで、一行は翌朝の旅路のために体を休めることにした。
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