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 又七とは別れ、のんびりと中央に集まる人々の間に歩みを入れて、一行は目的の地を踏んだ。中央に平城を構え堀をめぐらし、その周囲に武家や公家などの家が並び、また堀があって平民の暮らす街となる。そこもきれいに区画分けをされ、職人は職人町、商家は商家町と住み分けがなされていた。その間をまっすぐに、堀にかかる橋に向かって広がる大道の左右は、旅人相手の商売店や宿、行商人が開く市の区画から始まり、だんだんに身分のあるもの達を相手にする商店の区画へと移り変わっていく。  迷いなく武家や公家を相手にしている商店の区画に進む孝明の脇を、宗平が肘でつついた。 「なんだ」 「なんだ……って――ここは、武家や公家を相手にする店ばっかが並んでいる所だぞ。こんなところに来て、どうすんだよ。今まで聞かなかったけどよ、汀の村を助けるって、どうやって助けるつもりなんだ」  孝明がぴたりと歩みを止めて、手綱を引かれる焔の足が止まり、背に乗っていた汀が首をかしげて二人を見た。 「宗平」 「なんだよ」 「阿久津家の三男坊なら、このあたりに顔が利く店もあるだろう。……旅の埃を払いたいんだが」     
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