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「人払いもなにも――おれが呼ぶまでは誰も来ないように、してあるぜ。孝明と汀は嘘の素性になってるからな。ゆっくり出来ねぇだろう」 「そうか――気遣いの礼に、池の……あの岩を見ていろ」 「岩――?」  孝明が示したのは、池の中ほどから顔を出している苔むしたものだった。それに目を向ける宗平の横で、口内で何やらつぶやいた孝明が胸の前に指を立て、そこに息を吹きかけて岩を指せば、苔がみるみる膨らんで小さく白い花を咲かせた。 「――ッ、こりゃあ……」  絶句した宗平の横で鯉に菓子を与えるのを止めた汀が、目を丸くして岩を見つめる。二人の様子に、寂しげに目を細めた孝明が言った。 「これが、おれの正体だ」  え、と宗平が顔を向け、汀がきょとんとして孝明を見上げる。汀に笑みかけた孝明が 「汀――オマエは、これに近いことが出来るようになる。まだ、具体的にどのようなことが出来るかは、おれにもわからないが」  その言葉に、汀は目を輝かせて竜の根付を両手で包み、捧げ持つようにして意識を集中する。そうすれば池の水が波打ち始めた。 「んん~っ」     
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