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 唸りながら力を込める汀に呼応するように、波がだんだん渦となる。けれど、それ以上の変化が認められないまま、ぷはっと汀が息を吐き出し気を緩めると、水面は徐々に動きを止めて静まった。残念そうに唇を尖らせる汀の頭に慰めるように手を乗せて、宗平は孝明を見た。説明を求める強い瞳に促され、孝明はまっすぐに宗平に体を向けて口を開く。 「大名は妖(あやかし)を飼っているという話を、聞いたことは無いか」 「ああ、それなら聞いたことがあるぜ。大名は代々、妖怪を従えて諸国に放ち、領主の治政を監視しているって…………な」  言いながら、先ほど孝明が見せたものと今の話を重ねあわせた宗平の表情が、さざ波のような驚きに乱れ始める。それを鎮めるように、孝明が頷いた。 「おれは、その妖怪だ」  何かを言おうと口を開く宗平の動きを、定まらぬ感情が縛り封じる。それを悲しげに受け止めた孝明が背を向け歩き出すのに、ようやっと自分の感情の呪縛から逃れた宗平が追いかけ、肩を掴み乱暴に振り向かせた。 「どういうことか、説明をしてくれるだろう」 「――――この国の神話を、知っているだろう。神が降り立ち人となり、この島を治められている天帝様になったと」 「ああ――そっから、いろんなものがつくられていったって話だろう」     
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