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 ぞわ、と宗平の産毛が逆立つ。その時に、汀がどのようなことになるか――おそらく、妖怪に憑かれたと追い立てられ命を奪われることになるだろう。共に暮らしていた者たちに、恐怖からくる殺意を向けられ刃を向けられ襲われるというのは、どんな気持ちなのだろうか。 「おれは、そういう子どもらを見つけて監視し、必要があれば連れて力の使い方を教え、長親様に預ける役を担っている。――汀の村の荒寺に住んだのは、領主が新しくなり初めての租税の徴収が行き過ぎであることの調査と、汀の力の気配を感じていたことを受けての、行動だ」 「孝明も、同じなのか」  汀から目を離した宗平の言葉に、孝明は問いを浮かべた目を返す。 「誰かに拾われて、教わったのか。それとも、追われていたところを拾われたのか――」  問いを薄い笑みで受け止めて、孝明は静かな音を発した。 「いい、男だな――宗平は」 「答えろよ」  目を伏せた孝明が鼻から細く息を吐き、汀を手招く。小走りに寄った汀を片手で抱きしめて、強い目で宗平を見つめた。 「おれは、大名様の護衛に行かなければならない。その間に、汀のことを頼む。大名様のことが終われば、迎えに来る。それまでは、ここで汀をかくまってもらいたい」 「それが、おれを用心棒として雇った本当の理由か? 自分が出ている間に、汀をかくまっておける場所が欲しかったから、共に行くことを決めたのか」  慎重に言葉を出した宗平に、あいまいな顔をした孝明は汀の背を軽く叩き宗平へと押しやった。     
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