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 静かに襖が閉められて、部屋はまた闇となった。ほんの少し先も見えぬ暗い室内を、明るい部屋に居るように迷いの無い足取りで進んだ長親は、孝明の前に腰を下ろす。 「大名様は、明日ご到着の予定だ。行程の遅れも無く、問題も無いままに参られる」  孝明は、身じろぎすらせずにその声を聞いていた。 「オマエと、その他の者たちが集めた話はすべてまとめて、報告を終えている。明日、領主への裁断が下される。――立場と言うものの認識をはき違えた苦労知らずの男が、どんな顔をするのか想像がつきすぎて、まったくつまらんな」  ふう、と息を吐き出した長親の声音が、急に優しげなものに変わった。 「二月も誰かと共に気安く過ごしたのは、どれくらいぶりだった」  孝明は、答えない。 「あれは、いい男だな――孝明。あれを、大名様の近習としたいところだが、どう思う」  孝明は、まるで石になったかのように動きを止めていた。しばらく待ってみても、孝明が何の反応も示さないと決めていることに気付き、長親は諦めたような呆れたような息を吐いた。 「大名様が滞在なされるのは五日だ。その間に、遺漏なきよう務めろ。下らない呪詛やなんやと、仕掛けてこようとするバカが居ないとも限らないからな」 「――おおせのままに」     
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