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三人のみになってから、長親が口を開く。その顔を、目を、意図を窺うように見返しながら宗平は慎重に口を開いた。
「力を、少しだけ示して見せた」
「何をしていった」
警戒を解かず、言うか言うまいかを悩む宗平に長親が顎を持ち上げる。
「異形になり空でも飛んだか?」
「そんなことが、出来るわけがねぇだろう」
即座に打ち消した宗平が、にやつく長親の顔によもやと疑念を浮かべる。
「――異形に、なれるのか」
「人では無いと、言っただろう」
面白そうな長親が、孝明が何を見せて去ったのかを再び問うと、宗平は正直に苔に花を咲かせたことと、風を起こし姿を消したことを告げた。
「それを見ても、宗平は孝明を人と言えるのか。奇怪だと嫌悪をしないのか」
「奇怪だとは思うけどよ――そうなったら、汀だってそうだろうが。おれは汀を嫌いじゃねぇし、そんなことで孝明を嫌悪したりしねぇよ」
「何故、受け入れられる」
「何故も何も……二か月ぐれぇの付き合いだけどよ、一緒に旅して来たんだ。アイツがどういう奴かぐれぇは、わかるさ。アイツは、間違いなく人だよ。アイツみてぇに妙な力を持っちゃあいねぇが、本当に人なのかと疑っちまうような奴は、他にいくらでもいるしな」
さらりと言ってのけた宗平の顔に、何の含みも無いことを確認した長親は、満足そうに頷いた。
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