13人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
「――さあな」
まんざらでもない顔で、孝明が言う。腰に手を当てた宗平が、それじゃあ指示を仰ぎに雇い主のところへ行こうかと孝明に案内を促した。
「やっかいなことを請け負ったな」
「孝明が出来るんなら、おれにも出来るだろう」
「その根拠は、どこにある」
焔の手綱を手にした孝明の問いに、宗平は腰の刀を叩いて見せた。
「なるほど」
軽く受け流すようにつぶやいた孝明が、公家や武家が住まう場所へと続く橋へ――長親の、大名の宿泊している場所へと向かう橋へと向かう。焔が足を持ち上げ橋板を小気味よい音で踏み鳴らしながら進み、宗平もそれに続いた。
気負う事も無く、馴染んだ歩幅と速度で新たな任に赴く一行を、昇り始めた太陽が橙のまぶしい光で闇から切り離すように浮かび上がらせ、その影を一つの塊として――共に歩むものとして、分かちがたいくっきりとした輪郭を持たせて橋の上に描き出した。
最初のコメントを投稿しよう!