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 その顔は恐怖に強張りながらも、彼らを気遣う色を存分に滲ませていた。 「そんな顔をするほど、ひどい仕打ちをされるのか」  唇を噛みしめた男が深く頷き、よければ詳しく聞かせてくれないかと問いかければ、心の奥底に沈めていた不満の蓋を慎重に持ち上げて、けれど語る時は噴き上がる火山のように熱く激しく、男は役人がどれほどに村を苦しめているかを告げた。そうして最後に、だから役人が来る日はおとなしくしておくようにと、怒りの色から気遣いの色に顔を戻して念を押した。  その夜、遅くまで作業をしていた村の若者が、大きな鳥が羽ばたく音を耳にした。こんな夜更けに飛ぶ鳥など今まで聞いたことが無いと、好奇心から家の外に出て月光が煌々と藍色に照らす世界を見回してみても、鳥の影どころか雲の影さえ見えなかった。首をかしげて作業に戻った若者が翌朝に人に話せば、疲れて幻聴を聞いたか、何かの音を鳥の羽音と聞き間違えたのではないかと言われ、そうか、そうだなと納得をして、その事を意識から外した。     
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