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 その翌日、来るはずだった役人が、唐突な大名家からの使いを迎えなければいけないので、検分は先送りにするという連絡が村に届いた。村人はとりあえずしばらくは安心だと胸をなでおろし、子どもたちは遊びに出られると喜んで荒寺へと向かう道を駆けて行き、奥へ向かって声をかけたが何の返答も聞こえない。首をかしげて上がり込み、あちらこちらを探ってみても人の気配は欠片も無く、村に戻って報告をすれば大人たちも荒寺に来て、無人の荒寺を――人の住んでいた気配すらも失せている場所を確認し、どこに行ったのかと周囲を探していると、馬の足跡を見つけたと子どもが声を上げた。その足跡は林の奥へと続いており、途中で途切れてその先は何処へ向かったのかがわからなくなっていた。  村人たちは彼らが逃げてきた公家だと思っているので、役人が来ると聞き、追手の可能性もあると考え別の場所へ行ったのではないかと、自分たちの納得のいく理由を見つけて落ち着いた。 ――ひと月後。今までの役人は任を解かれ、新たな役人が租税の管理を行う事になったと、伝令の馬が村へ伝えに駆けてきた。
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