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「馬鹿を言え。某とて武人の端くれ。良い馬を見分ける目は持っているつもりだ。そういうつもりで、言ったんだ」 「わかっているさ、宗平。汀の村で、馬を一頭欲しいと言ったら、焔を用意されたんだ。何処からどうやって手に入れたのかは知らないが、苦労をしただろうな」 「それだけの期待を、寄せられていると言うことだな。孝明は」 からかう声の宗平に、大仰にため息をついて見せた孝明が、うそぶいてみせる。 「これほどの重圧、耐えられそうも無い。いっそ、知らぬふりをして別の国へと逃れてしまおうかとさえ、思うぞ」  ちら、と目を見合わせて似たような悪童の笑みを浮かべあう二人に、汀があくびをしながら「おやすみなさい」と言ってくる。それに答え、いつの間にか汀を挟んで眠ることが常となった二人も身を横たえ、宵闇よりもまだ暗く、森の息吹のように暖かな暗闇へと意識を沈めていった。  街道の途中、ぽつんと見えた農村らしい姿に、あそこに立ち寄ろうかと孝明が声をかけると、宗平は苦い顔をした。 「なんだ――寄りたくない理由でもあるのか」 「いや――」 「じゃあ、どうしてそういう顔をする」  ううむ、と言い淀み鼻の頭を掻いた宗平は、あの村は無人だぞと言った。     
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