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 村の近くの荒寺に、いつの間にか二人の男と一人の子どもが住みつき始めた。一人は偉丈夫な浪人という風体の男で、もう一人は殺生などおよそ出来そうも無い公家ふうの青年だった。子どもは公家ふうの青年の弟のようにも見えて、村の人々は跡目争いか権力争いに負けた公家が、ただ一人の供のみを連れて逃げおおせるうちに、ここにたどり着いたのではないかと噂をしはじめた。  彼らは村の人々と強いてかかわることもせず、けれども好奇心に駆られて近寄る村の子どもたちを邪険にすることもせず、静かにひっそりと暮らしていた。     
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