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 足元が煙るほどの雨に足止めを食った孝明らは、渡る予定の川の傍にある宿場町に滞在をしていた。そこでは、多くの足止めを食らった人々がとどまり、不平顔をして酒を食らったり、天候に文句をつけたり、不安な顔をして空を眺めたりしていた。  雨で足止めを食らうものたちは、日に日に増えていく。宿の者は、客に相部屋を頼んだり、足止めを食らったことでの苛立ちを、些細な事で爆発させて喧嘩を始めたもの達の仲裁に奔走していた。 「あの、申し訳ございません」  孝明と汀が、飽きもせずに空から降り続けている雨を眺めていると、年若い――汀よりは二つか三つほど上であろう少女が、遠慮がちに孝明らの泊まっている部屋の襖から、顔を覗かせた。 「相部屋の、申し出か」  申し訳なさそうにしている少女に、先んじて孝明が声をかけると少女は恐縮したように身を縮め、頭を下げた。 「はい――もうしわけございません」  その様子に、孝明は目じりを下げて窓際から襖へと移動する。廊下で頭を下げている少女のそばに膝を着いた。 「これほどの雨だ。足止めを食う人も多いだろう。気にする必要は無い。遠慮なく、相部屋にすればいい」     
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