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四
宗平を仲間に加えた一行は、街道脇の森の中に布を敷き枝に布と縄をかけて簡易の寝床を作り野営をしていた。時折、孝明がヒョウタンの水に意識を向けているかと汀に問うのを疑問に思った宗平が、なぜヒョウタンの水を気にかけるのかという問いに、こういうことが出来るようになるためだ、と野営場所に選んだ水場で孝明が水を浮かべて見せ、宗平は感心したように、不思議そうに首を動かし、眺めまわす。
「汀には、これが出来る資質がある。その訓練のために、ヒョウタンの水を気に掛けさせている」
「手妻では、無いのか」
「種も仕掛けもあるが、手妻とは違うな。気脈というもののことは、武芸をたしなんでいるのならば、知っているだろう」
「ああ。居合切りの時に放つ気や、触れずに相手を圧倒させるようなものだろう」
「それを、うまく扱えばこういうことが出来る」
「ほぅん……?」
呆れたような、納得したような、不思議がるような声を発し、首をかしげて眺める宗平に、連日の稽古でヒョウタンの尻をくるくると難なく回転させることが出来るまでになった汀が、自慢げに自分の腕を披露する。
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