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数日後、夏子の父と名乗る人物から電話がきた。
夏子との交際のことで、話がしたいとのことだった。
先日夏子の様子が変だったことと繋がった気がして、俺は義父になるかもしれない人に会うことを承諾した。
指定されたのは、丸ノ内の高層ビルの社長室だった。
夏子の父の職場だ。東京に来て4年目だけど、こんなところは初めてだ。
大学入試よりも緊張したことを覚えている。
部屋に入るとどっしりと構えて座っている初老の男性がいた。
彼のむかえに腰掛けると、きれいなティーカップに入ったコーヒーが出された。
夏子の父はそれに口をつけると、こちらを真っ直ぐ見ながら言ってきた。
「単刀直入に言う。うちの娘と別れてほしい」
夏子の父の鋭い目つきは今でも忘れることはできない。
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