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付き合い始めて3年、大学最後の年を迎えようとしていた。 授業やら、就活準備やら忙しない毎日が過ぎていった。 俺は地方公務員を目指して勉強していた。 彼女はそれを一生懸命応援してくれた。 夏子は親が会社の社長ということもあって、そこに就職することが決まっていた。 「父が言うことは絶対なのよ。あまりにも頑固で反抗する気にもならなくなっちゃった」 ケロッとした顔で夏子は言っていた。 春が過ぎたある日、夏子が俺の家に来て、突然こう言った。 「結婚しよう」 「へっ!?」 と変な声が出てしまった。 持っていたカップに入っているコーヒーの表面が揺れる。だが夏子は本気らしい。 「大学卒業したら結婚しよ。お互いもう十分大人だし、二人で生きていける」 「夏子、いきなりどうかした?」 「何が?」 「今日は様子がおかしいぞ」 うん、明らかにおかしい。いきなり家に来て、結婚だなんて。 今までそんな話を一度もしたことはなかったし。 「そんなことない。それで、結婚してくれる?」 彼女の突然すぎるプロポーズに、俺は簡単に返事をできなかった。 「そうだよね、急にはできないよね。公務員試験も終わってないもんね。ごめんね」 彼女は慌てた様子で言葉を紡いでいく。 「でも、本気なの。結婚。試験が終わったら、返事ほしい」 俺は、分かった、と言うので精一杯だった。
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