第三章

4/5
前へ
/11ページ
次へ
 「貴方たちがこれ以上危害を加えなければ、『彼』もこれ以上、皆さんを煩わせる事はありません。」二体は美しく、完璧なハーモニーで言った。その言葉と共に、上空からメカニカルな重低音が響いてきた。慌てて上空を見上げると、そこに巨大な円盤が降下して来る所だった。  たちまち無線に、円盤出現を告げる混乱した声と共に、イーグルチームへの緊急出動要請が流れてきた、とその時…  「本部、こちらホリカワ。円盤に攻撃の意図はありません。繰り返します、円盤に攻撃の意図はありません。こちらから連絡するまで、反撃せんといて下さい!」驚いて俺が声の方を向くと、そこには、それまで明らかに余裕の無かった態度からは一変して、穏やかな笑顔を浮かべているホリカワ隊員の姿があった。  やがて円盤の底面から、オレンジ色の光が地上に伸びたかと思うと、怪物と二体のポッピー、いや、もはや名前さえも解らない二体は吸い上げられるように消え去り、そのまま上昇した円盤は、あっという間に雲間に隠れて見えなくなってしまった。  すっかり元の静けさを取り戻した川辺に、静かにせせらぎの音が響く。  「何や知らん…ここんとこのワシは、きっと疲れていたんやな…。」ホリカワ隊員は独り言のように静かに言った。「元々、相手の意図が解るまでは、どんな相手であろうと、ギリギリまで戦いを避ける。そう自分に言い聞かせていた癖に…恥ずかしいわ。今回はすっかり取り乱してしもうた。」     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加