第二章

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 そこからのホリカワ隊員が取った行動は、後から思い返しても常軌を逸しているとしか言いようが無いものだった。メモリーバンクの解析結果から、下水道に何らかの攻撃的な性向を有する生命体が潜んでいる事は確実である。だが狭くて入り組んでいる下水道の構造上、有人で追い立てるのはリスクが大きい。逆に言えば、そのテリトリーに踏み込まない限りは、比較的安全と言い換える事も出来る。とは言え、いつまでも放置して置くわけにも行かない…。  「ポッピー君に自衛のための武器を持たせるんや。」ホリカワ隊員が下した結論に、若干の危うさを感じながらも、理由が理由だけに、防衛隊上層部も容認せざるを得なかった。こうして最初は携行型の兵器から始まり、それからは翌日も、そのまた翌日も、ポッピー君達は探索に投入されては破壊されて…のループに陥り、その度毎に、武装レベルもエスカレートして行った。  誰も居なくなった無人の街、そこに時折、地下から腹に応えるような爆発音が響いてくる様は何とも言えずシュールである。ポッピー君達の武装レベルが上がるほど、索敵時間そのものは伸び、敵の姿に関する情報も、少しづつだが集まって来つつあるのは事実だ。そこから得られた情報を元に、ホリカワ隊員が血走った目で武器や装備を見直し、改良を加えられたポッピー君達が投入されては、結局敗れて戻ってくる日々が続く。  『地を吐きながら続けるマラソン』は永遠に続くと思われたのだが、ある日を境にふっつりと戦闘の音は途絶えた。だが、それと同時にポッピー君も二度とは戻って来なくなってしまったのだ。もしや、相打ちになったのだろうか…。
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