第三章

2/5
前へ
/11ページ
次へ
 「…来るぞ。」後から合流した数学(かずたか)センパイが携帯端末を操作しながら言う。ほどなくして、目の前のトンネルから白い人影が二体、姿を現した。「ポッピー!無事やったんか!」叫んで駆け寄ろうとするホリカワ隊員を、俺とガンテツは後ろから羽交い締めにして必死に止めた。「なんでや…何をするんや!」  「ホリカワ隊員、落ち着いて下さい!」俺は思わず大声を上げた。視線の先、トンネルの奥に、何か巨大な物が蠢いている様子が見える。ホリカワ隊員もそれを見たのか、驚愕の表情を浮かべ、動きが止まる。すかさず俺はホルスターから銃を抜き、ホリカワ隊員を庇うように前に出て構えた。  後ろからローバーの主砲が動く音も聞こえる。と、驚いたことに一体のポッピーが両腕を上げて、まるで両者を宥めるような仕草を見せて歩み出て来た。  「皆さん、落ち着いて下さい。私達は争いは好みません。」涼やかな声でポッピーは言った。その声を聞いた途端、俺は何とも形容のしようが無い違和感に襲われた。思わず後ろを振り返ると、他の三人も一様に困惑したような表情を浮かべている。  「なんや…まるで人間そのものの言い方やないか…」違和感の正体を、端的にホリカワ隊員が表現してくれた。  「はい、私たちは既に、あなた方が『ポッピー』と言う名称で認識している個体ではありません。物質的には同一ではありますが、人格を獲得した今、精神的には全くの別物として存在しているのです。」     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加