第三章

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 「なんやて…?」ホリカワ隊員は、ただでさえ大きな目を、こぼれんばかりにギョロリと剥いて絶句した。  「この数日間、私たちは敵とは何か、戦う目的とは何なのか、何も解らぬままに、次々に武装を強化され、戦う事を強制されて来ました。」もう一体が歩み寄りながら言う。こちらは声の高さまで変わっており、まるで…まるで女性の声のように聞こえるではないか。「しかし、『敵』と遭遇し、戦いを重ねるうちに、私たちは気付いたのです。争う事、それ自体の無意味さに。」  「そんなある時、ふと『敵』が私たちに語りかけて来たのです。」声の低い一体が言う。「それは…私たちをとても『混乱』させました。しかし、話をする事、意思の疎通が図れる事、それ自体が戦うことよりも重要であると、私たちにはわかったのです。」  「だから私たちは決めました。」高い声の方が言う。「あの『彼』と共に、この星から去る、と。」  結論はそっちかよ!と俺たちの誰もが心の中でツッコミを入れたに違いない。だが、考えてみれば、全ては、暗がりの中に潜む者は全て敵、そう決めて掛かっていた、俺たち地球人の自業自得であるとも言える。     
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